【被害届とは】
被害届とは、犯罪の被害に遭ったと考える者が、被害の事実を日本の警察などの捜査機関に申告する届出をいいます。
被害届は、被害を受けた関係者が、一般に日本の警察に対して提出します。
交番や警察署を訪れて被害事実を申告する場合には、日本の警察官が聴取事実を元に作成することもあります。この事例として、財布や免許証を落とした場合が該当します。
被害届は、警察署内に各フォームが置いている場合もありますが、一般的に私人の任意の書面でありますので、役割としては犯罪事実を捜査機関に告知することになります。
つまり、犯罪による被害があったことを警察等に通知することが主要な役割であり、犯人の訴追・処罰を求める意思の有無までは求められていません。
そのために、被害事実についてのみ申告して、警察が受け取っても、犯人の起訴を求める意図は、通常の被害届には含まれていないため、被害届があっても捜査を開始するかどうかは担当警察官もしくは担当課長の判断に左右され、告訴や告発と違い被害届には署長決裁が不要なうえ、警察本部への報告義務もありません。
出したら出しっぱなしで警察は何もしなくても構わない、ということになります。
しかし、最近は、被害者に対する警察などの捜査機関の十分な対応が求められていることから、警察などが正式に被害事実を知った時点としての被害届の重要性は増しており、捜査・立件に必ずしもとらわれずに、告訴・告発に準ずる書面としての取扱いが図られています。
告訴・告発とは違い被害届は犯人処罰をそれ自体では求めないものですが、虚偽の被害届を提出すると告訴・告発と同様に刑法172の定める虚偽告訴等の罪を構成します。
【最近の被害届の受理の有無について】
前項で、「被害届を受け取っても警察は犯人の起訴を求める意思は含まれていないため〜最近は、被害者に対する警察などの捜査機関の十分な対応が求められている」と記載したことから、被害届を提出すれば、警察はすぐに犯人を逮捕してくれるのではないかと良い方向に考えてしまうような内容を記載しました。
しかし、実際は被害届の重要性が増したということは、警察は被害届を受理しない、という傾向になってきています。
犯罪捜査規範第61条1項には、被害届は記載必須事項が全て記載されていれば必ず受理しなければいけない、と定められていますが、例えば、詐欺などで被害届を提出したとしても「民事不介入」などの難癖をつけて受理しないことが現在の警察です。
もっとも、詐欺を観点に考えてみると、「人を欺いて財産を不法に取得する意思の立証」が求められている以上、事実行為だけでなく、人を欺こうとしていた意思を立証しなければならないので、法律そのものを変えなければ警察もなかなか逮捕に踏み込めない事情もあります。
また、警察が被害届を受理しない理由の一つとして、被害届を、加害者の逮捕を目的としない、加害者との示談交渉や和解交渉を有利に進めるために提出することが多いことがあります。
例として、「被害届を提出した。取り下げて欲しかったら○○円で示談(もしくは和解)しろ」と、被害者側の有利な内容で示談や和解を迫ります。
警察がせっかく捜査をして証拠を集め、告訴しようとした瞬間に被害者側が有利な和解が成立したことを条件に被害届の取り下げを行う、このようなケースは全国的に見られ、民事と刑事の壁がある以上、警察はその取り下げの意思に従わざるをえず、せっかく捜査したのに証拠も含め、全て無駄になる、というものが全国に多発しています。これでは、警察がやる気をなくすのも分かります。
【風俗店とのトラブルと被害届】
一般人と風俗店とのトラブルはなんといってもデリヘルを利用した際の本番行為のトラブルが目を引きます。
この場合の罪状を法律に当てはめると
- 《依頼者(デリヘルで本番トラブルを起こしてしまった男性)に対して》
刑法第177条の強姦罪が成立します。被害者はもちろんデリヘルの女性従業員です。 - 《デリヘル店自体に対して》
デリヘル店は関係ないように見えますが、デリヘル店に対しては売春防止法第3条が成立してしまいます。したがって、デリヘルの本番行為というものは女性従業員だけでなくデリヘル店も被害者になります。
この場合、デリヘル店(正確には女性従業員)から警察に対して「承諾ない本番行為に対しての被害届」を提出することはよくあることです。被害届を提出する行為自体が売春防止法第3条違反について否認しているという意思を形成するからです。
ただし、実際に警察が被害届を受け取るかどうかは、その警察の判断によります。
受け取る場合もあれば受け取らない場合もあります。
作成者(司法書士)個人としての意見はデリヘルの本番行為のトラブルにおいて警察は被害届を受理することは消極的と思うのですが、以前、同様のトラブルで知り合った弁護士は「強姦罪で起訴できる案件です」と言い切っていましたし、法理論上は確かに「デリヘルの本番行為のトラブルにおいては強姦罪が成立する」と考えざるを得ませんので、やはり、和解書・合意書・示談書などを相手方女性と交わしておいて、後顧の憂いを無くしておかないと安心できないと思います。
誰にも相談できず、一人でお悩みの方、ぜひご相談ください!